2009年4月2日木曜日

【第5節】外国人であるということ

トライアウト会場に行くと、多くの選手達が 我こそが先にとひしめき合っていた。

その中で、当時英語も不自由な18歳の私がその選手達を押しのけて前に出てアピールすることは簡単ではなかった。

 結局その後も含め、3回のテストでは何のアピールも出来ずに終わってしまった。


 そして4回目のトライアウトでは今までの教訓を活かし、恥を捨て、誰よりも早くグラウンドに出てウォーミングアップをし、目に付いた球団関係者には全て大きな声で挨拶をした。


 コンディションは決して悪くなかったので、もしかしたらという期待はあった。


 ・・・・トライアウト終了後、スカウトに呼ばれ、「キャンプに参加しないか」と言われたのである。

もう一人、アメリカ人の青年も呼ばれていた。

 これでまた心の奥で淡い夢が復活したのである。

 そしてまた練習の日々に戻り、数日がたったのに連絡が来ない

いやな予感がし、今度はコーチに電話をかけてもらい、事実を確認してもらうことにした。

 「国籍はどこだ?」

 ビザは持っているのか?」


 私は言っている意味がよく分からず、「国籍は日本で、ビザは取っていない」とだけ答えた。


  ・・・・


 コーチが電話の向こう側と何かを話している。コーチの表情が、「それはしょうがない。残念だ」といったような感じに映った。


 ・・・・コーチが残念そうに話してくれた。


そう、日本人がアメリカでプロ選手として生活するためには就労ビザがいるのである。

プロは野球をしてお金をもらうのであるから、外国人はそのために政府の許可が必要なのである。


 本当に何も知らなかった18歳の私は、日本人であることはアメリカでは外国人である、ということを思い知らされたのである。


 たいていの球団はビザを用意してくれる。

しかし今回のような、すでに球団の持っているビザを、抱えている外国人選手で使い切ってしまっているというケースは多い。


 そして、これから野球の実力だけでなく、国籍という崩せない壁もハードルとして常につきまとったのである。



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